ヘルスプロモーションという考え方
ヘルスプロモーションという概念があります。
「人々が、自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセス」、と定義されるそれは、
1986年のWHO第1回ヘルスプロモーション国際会議で提唱されました。
このままではあまりにも分かりづらいので、ここに至る経緯もふまえて少しお話しします。
「すべての人に健康を」という目標を実現する上で、、とくに先進国において重要なのは、
すでに「細菌やウィルスによる感染症は、医療の発展によってかなり制御可能となってきて」いて、
「死因の主たるものは、ガン・脳卒中・心臓病という、生活習慣病に起因するものへとシフトしてきている」事実でした。
生活習慣病は、細菌感染とは違い、自らの意思でコントロール可能な面が多い疾患なので、
これまでとは違うアプローチが必要である、ということが認識されはじめました。
つまり、これからは医療従事者の役割が「健康を与える」ものから、「人々が自らの健康をさらにうまくコントロールし、改善していけるようになる」
支え、サポートへと変わりつつあるのです。
つまり、「健康」でいるための主役は個々人である、とWHOの提言は述べています。
これまでの医療では、来院者はみな「患者」であり、
「医療者」によって「病気を診断され」「治療を受ける」者であるとされていました。
「お医者さま」が絶対であって、健康は授けられるものですらあったかもしれません。
その反動で、近年は来院者を「患者さま」とよび、
「インフォームドコンセント」として治療の決定権を来院者に押しつける流れが生まれています。
それでもやはり、治療は「医療者」が主導して、「患者はそれを受ける者」であるままでした。
わたしたちは、そのどちらも不充分ではないかと考えています。
来院者と私たちは、どちらが主でどちらが従といものではなく、
対等な関係であるほうが自然なのではないかと思います。
ところで、歯科における主要な疾患は「虫歯」と「歯周病」です。別項でもお伝えしているとおり、
これらの原因には口腔常在菌が強く関与しています。この点から、「虫歯」と「歯周病」が
細菌感染症である、というのは間違いではありません。
しかし一方で、自らの生活習慣の改善によってコントロールできるという面も持ち合わせています。
細菌感染症であると同時に、生活習慣病とも言える、と私たちは考えます。