当院では、最新の口腔内スキャナーを3台導入しています。
1台は精密なセラミックの修復物やインプラント上部構造作成用で、あとの2台はマウスピース矯正用です。
従来法の歯型は、印象材と呼ばれる粘土のような材料を口にいれて、それが固まるまで保持する方法でとっていました。
そのため、時間もかかり手間も多いものでした。印象材の種類にもよりますが、固まるまでに片顎5分前後、
材料の準備などの時間も含めると上下の咬み合わせの型どりに15分以上必要なこともあります。
えづきやすい方にとっては敬遠される処置ですが、詰め物やかぶせを作るためには避けることができない手順であるため、
ストレスを大いにおかけする方法でした。
また、「歯」には微妙なくぼみや歯と歯の隙間があるため、
完全に固まってしまう材質では引っかかってしまって外すことができなくなってしまいます。
このため、ある程度弾力があって外すことができる材質でなくてはなりません。
弾力があるということは変形するということです。
歯科治療用のかぶせや詰め物は1/1000mmレベルでの精度が必要なものなので、
印象材の変形=かぶせ物の変形となってしまうため、精密なものを作るためには材料の変形は歯科医師・歯科技工士にとって悩みの種でした。
近年開発が急速に進んだ口腔内スキャナーとは、口腔内を小型カメラで撮影し、そのデータをもとにコンピュータを介して立体画像を再現し
、モニター上に映し出す装置です。
光学印象とも呼ばれ、口腔内の細部まで精密に捉えることができるので、必要な情報を正確に伝えることができます。
口腔内スキャナーはコンパクトなヘッド部分(ワンド)で光学スキャンするうえ、およそ5分程度で上下顎のかみ合わせを記録することができるので
、嘔吐反射のある患者様でもストレスフリーに治療を受けられます。
また、デジタルデータですので、決して変形することがありません。
デジタルテクノロジーが歯科治療を変革したもっとも画期的な装置の一つと言えます。
このようなメリットがある反面、口腔内スキャナーにはデメリットも存在します。
その最たるものは「費用」です。
口腔内スキャナーによる光学印象法は、現在の保険診療では使用することができません。
「国民皆保険制度」は、全ての日本国民が日本全国どこでも同じ医療費で平等に医療が受けられる制度のことです。
では、なぜ保険診療に口腔内スキャナーを導入することができないのか。
それは、すべての歯科医院が口腔内スキャナーを導入できるわけではないからです。
その理由は、口腔内スキャナーが「ちょっとした高級外車1台分」の価格だからです。
この費用を保険で賄うことは容易ではないことがご想像いただけるかと思います。
このため、剤時点では、口腔内スキャナーを用いた型どりは、保険外診療であるセラミック修復物の作成やマウスピース矯正で使用しています。